2026年11月1日から、訪日外国人(インバウンド)向けの免税制度が大きく変わります。従来の「購入時免税」から**「リファンド方式(税還付方式)」**へと移行することで、日本での買い物体験や、お店のオペレーションはどのように変わるのでしょうか?
この記事では、今年11月免税システムの確定が発表される直前、現場の声を元に新制度のポイントを分かりやすく解説し、日本経済への影響についても考察します。
なぜ今、免税制度が変わるのか?
日本の免税店数は、インバウンド需要の増加とともに、過去数年で飛躍的に増えました。観光庁の最新データ(2025年9月4日発表)によると、2025年3月末時点で免税店数は63,278店(半年間で1,886店(3.1%増))にまで増加し、その勢いは止まりません。訪日外国人旅行消費額も、2025年第2四半期には2兆5,250億円を記録するなど、数字からもその需要拡大が伺えます。
一方で、現行制度には免税手続きの複雑さや、不正利用が課題として指摘されてきました。これらの課題を解決し、日本の消費税制度の公平性を保つため、制度の抜本的な見直しが求められています。
リファンド方式って何?新旧制度を徹底比較
新旧の免税制度の主な違いを以下の表にまとめました。
項目 | 現行方式:購入時免税 | 新方式:リファンド方式 |
価格提示 | 税抜価格 | 税込価格 |
店頭包装 | 一般物品と消耗品を区別。消耗品は特殊包装が必要。 | 区分の廃止、特殊包装が不要。 |
免税対象物品 | 通常生活の用に供する物品 | 用途を問わない |
免税対象金額 | 【一般物品】5,000円以上【消耗品】5,000円〜50万円 | 購入額の上限なし。 |
還付タイミング | 購入時にその場で免税。 | 消費税相当額を還付。出国確認後にクレジットカード、モバイルペイ、銀行送金などで返金。 |
直送制度 | 訪日客限定(購入時免税) | 免税店に限らず、訪日客に限らず。一般店、日本在住者でもOK。輸出免税制度適用(購入時免税) |
リファンド方式による変更点と日本経済への影響
購入時の支払い
これまでは、免税店でパスポートを提示すれば消費税が引かれた価格で買い物ができました。しかし、新制度では一度、消費税を含んだ金額を支払うことになります。これまで購入時免税に慣れていた訪日客にとって、店頭で消費税を支払うことで割高に感じてしまう可能性があります。
還付手続きの流れ
購入後、出国時の空港でキオスク端末への登録、購入した商品とパスポートを税関に提示し、出国確認が完了すると、後日、登録したクレジットカードや銀行口座に消費税相当分が返金されます。返金手数料や還付手続きに手間がかかることで、買い物への意欲が減退する可能性が懸念されます。一方で、空港での手続きがスムーズに行われれば、不正が減ることで制度への信頼性が高まり、長期的なインバウンド消費の健全化につながります。
「直送」がさらに便利に
新制度でも、お店から直接海外へ配送してもらう「直送」は引き続き可能です。この場合、輸出免税制度が適用されるため、購入時に消費税はかかりません。免税購入対象者に限らず、免税店にも限りません。日本在住者が好きなお店で購入し直送した場合、免税対応を受けることが可能となります。特に、高額な商品や大きな荷物、大量のお土産を「手ぶら」で送りたい旅行者や、海外に住む家族・友人への贈り物に非常に便利です。制度移行後の10%免税インパクトは大きく「直送」は、リファンド方式のデメリットを補い更なる消費拡大の起爆剤として、その重要性が増しています。
まとめ:賢い買い物術と今後の課題
新しい免税制度は、訪日客にとっては少し手間に思えるかもしれません。しかし、日本の消費税制度の公平性を保ち、より良い観光環境を整備するための重要な一歩となります。お店側にとっては、不正リスクの軽減に繋がり、上限金額の廃止、特殊包装が不要になることで、店頭での業務効率と売上アップも期待できます。
ただ、インバウンド需要の増加に伴い、国内クレジットカード会社が、海外カード発行会社への手数料支払いで赤字(逆ざや)となる問題も報道されています。2025年の訪日消費額は10兆円と予測されており、その半数がカード決済だと仮定すると、国内カード会社全体の赤字額は350億円規模に膨らむとの見方もあります。
一部の国内カード会社は、訪日客に決済額の1~3%の新たな手数料負担を求める検討を始めており、この動きがリファンド方式による消費税相当額の返金額にどれだけ影響を与えるのか、免税システムやカード会社の今後の動向にも注目です。